スペイン語の前置詞 porと para の違い/porの意味と使い方
スペイン語の前置詞の中でも por と para ってすごく紛らわしいですよね。
日本語ではどちらも「ために」の訳をあてたりするので、どちらを使えば良いのか迷うケースはよくあります。
今回は、スペイン語の先生に最近くわし〜く習った por と para の違いと、por の意味と使い方についてまとめます。
最後におすすめの文法書『スペイン語文法ハンドブック』についても追記しました。
目次
por と para の基本の考え方
por と para の基本となる意味の違い、考え方を端的に言うと、
- por → 原因、理由、動機 (〜だから)
- para → 目的 (〜のために)
です。(わかりにくい!)
例文で考えます。
por は、なぜその行動をしたのかの動機・根拠を表します。
¿Por qué lavaste la camisa?
どうしてそのシャツを洗ったの?
Por la mancha.
染みがついたから。
¿Por qué no viniste a la clase de yoga ayer? ¿Tuviste mucho trabajo?
どうして昨日ヨガのレッスンに来なかったの? 仕事が大変だった?
No, por mi mamá. Fue su cumpleaños.
ううん、ママが理由なの。ママの誕生日会だったんだ。
para は、何のためにその行動をするのかという目的を表します。
¿Para qué lavaste la camisa?
何のためにその服を洗ったの?
Para llevarla mañana.
明日着るために。
一番押さえておくべきなのがこの点かと思います。
が、por にも para にもその他たくさんの使い方があり、それぞれまたややこしいことに似ていたりするのでやっかいです。
以下では、por の主要な使い方を紹介していきます。
para に関してはこちらの記事にまとめました。
スペイン語の前置詞 para の意味と使い方
porの意味と使い方(1)原因・理由・動機を表す
ここまでの原因や理由を表す por は、英語でいうと because of にあたると考えるとわかりやすいです。日常的によく使われる用法です。
理由を伝えるときは接続詞の porque を使うこともできますが、porque だと後ろを文章でつなげないといけないので時制の一致を考えないといけないのと、少し堅苦しい印象になります。
por であれば後ろに名詞・動詞(不定詞)を一語つなげるだけで使えるので簡単です。日常会話では por の方がよく使われていると思います。
Lo hice por ti.
君のためを思って(動機)、それをした。
Lo hice para ti.
君にあげるために(目的)、それをした。
繰り返しになりますが、por は動機・根拠、para は直接的な目的を表します。日本語だと微妙さがわかりにくいのですが。
Lo hizo por dinero.
彼はお金が原因でそれをしたんだ。
Vengo por verla.
彼女に会えればと思って(彼女が動機で)来た。
たとえば、以下の2つの文。
1. Él trabaja mucho por su esposa.
2. Él trabaja mucho para su esposa.
両方とも日本語では「彼は妻のために働く」と訳すことができますが、ニュアンスとしては次のようになります。
1. 彼は、妻が原因でたくさん働く。
妻が浪費家でたくさんお金を使うので、たくさん働かないといけない。もしくは、たくさん稼がないと妻が文句を言うので、たくさん働く。いずれにしても、彼がたくさん働く動機は妻にある、というニュアンス。
2. 彼は、妻のためにたくさん働く。
彼は妻のことを大事に思っているので、純粋に妻のためにたくさん働いている。
日本語で書くとけっこう大きな違いですね。気をつけなくてはいけない使い方かと思います。
porの意味と使い方(2)目標を表す
por の中に「買う」「求める」の意味合いが含まれているので、por compar el pan と言う必要はありません。
たぶん comprar を入れても通じると思いますが、ネイティブはこのケースで comprar を言わないので、自分が言われたときにぱっと理解できるよう por el pan の使い方に慣れておくと良いと思います。
porの意味と使い方(3)代理・代替・代価を表す
porの意味と使い方(4)方法・手段を表す
一般的に、ものを運ぶときの手段は por を使って表現します。
- Mandaron los paquetes por avión.
小包を航空便で送った。 - Traje el árbol por barco.
その木を船で運んだ。
人が交通手段を使って移動するときには en を使うので注意。
- Ella llegó a la oficina en taxi.
彼女はタクシーでその会社に到着した。 - Regresé a casa en metro.
メトロで家に帰った。
Acabo de hablar con tu madre por teléfono.
通信手段は por とセットで覚えます。
- por teléfono 電話で
- por internet インターネットで
- por televisión テレビで
- por radio ラジオで
porの意味と使い方(5)期間、時間帯、漠然とした(あいまいな)時間を表す
Volvieron por el diez de diciembre.
porの意味と使い方(6)経路を表す
「窓から」だと de を使ってしまいそうですが、「窓から入る」「窓から飛び降りる」という場合には窓を経路と考えるので por を使います。
- salir por la puerta ドアから出る
- caer por la ventana 窓から落ちる
porの意味と使い方(7)漠然とした(あいまいな)場所を表す
場所を示すときには en を使ってしまいそうですが、en は限定された、特定された、あいまいではない場所を表します。
- Nací en Tokio. 東京で生まれた。
- Te espero en la parada. バス停で君を待つ。
ラテンアメリカは広くて漠然とした場所なので por を使用。
ヨーロッパに、と言うときも同様に por Europa です。
- por todas partes あらゆるところで
- por varias zonas さまざまな地域で
¿Hay un restaurante japonés por aquí?
porの意味と使い方(8)受動文の動作主を表す
この美しい歌は、ほとんど無名の歌手グループによってつくられた。
El documento fue firmado por el ministro.
その書類は、大臣によって署名された。
porの意味と使い方(9)割合・掛け算を表す
私たちは1人につき1つのりんごを割り当てられる。
Hay que pagar un diez por ciento de impuesto.
10%の税金を払わなくてはいけない。
El tren corre a unos doscientos kilómetros por hora.
その列車は時速約200kmで走る。
3 × 3 = 9
以上が por の主要な使い方です。
経験上、基本を理解した上でスペイン語にたくさん触れていけば、por と para の使い分けは自然とできるようになってくると思います。
おすすめのスペイン語文法書
por と para の違いのような細かい点までしっかり文法を理解したい方は、『スペイン語文法ハンドブック』という文法書が参考になると思います。
中身はザ・文法書という感じなんですが、名詞、動詞、関係詞... と品詞ごとに文法が例文とともに丁寧に詳しく解説されています。
por と para の用法解説ももちろん載っていて、なぜこの2つが似ているのかという理由の解説や、その他の項目でも「男性単数形の由来」などなぜそうなっているかの補足説明が多く載っています。
「ハンドブック」なので、最初から読んでいくというよりも、わからないことがあったときに調べる辞典のような感じで使います。
初学者向けの入門書や一般的な教科書には載っていないような細かいことまで載ってるので、文法をしっかり理解しておきたい方、言葉の微妙なニュアンスまで捉えたい方にはおすすめの本です。
ちょっと長くなってしまったので、para の使い方は次回に続きます!
スペイン語の前置詞 para の意味と使い方
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