スペイン語作文練習の必要性と効果
中級レベル以降、スペイン語力の向上に作文練習(ライティング)は非常に有効だと考えています。
この記事では、私が考えるスペイン語の作文学習の必要性と効果についてまとめました。
語学学習に絶対の正解はないと思いますが、考え方の1つとして参考にしていただければと思います。
目次
スペイン語作文って、やる必要ある?
大人の語学といえば、とりあえず会話!って感じしますよね。英語のオンラインレッスンは普通「オンライン英会話」って呼ばれてるし。
とにかく、読み書きより実際に話せないと! みたいな雰囲気ありますよね。
作文なんていうと、まず最初に思われるのは「作文… やる必要ある?」ってところかと思います。
それよりも楽しく会話したい!
書けても話せなきゃ意味ない!
読み書きの勉強なんて日本人的!
などなどが想定される反応。
まぁやるかやらないかは結局その人の学習目的によると思いますが、私は自分の学習経験を踏まえて以下の考えを持っています。
DELE・SIELE 受験を検討している場合
試験にライティングのパートがあるので、作文学習必須です。
事前に作文形式や出題傾向を理解して書く練習をしておかないと、作文パートのクリアはかなり難しいと思われます。時間との勝負もある。
ただ、受験が目的の場合は、
- 達成すべき目標(設問への適切な回答)
- やるべきこと(書くテクニックを覚え、回答を書いて添削を受けるの繰り返し)
が明確なので、学習しやすいと言えます。
基本的には DELE のサンプル問題を入手し、回答を書いて、信頼できる人から添削を受けるという方法で取り組むことになると思います。
問題集は、私は、A2・B1 は Preparación al DELE (EDELSA)、B2 は EL CRONÓMETRO (EDINUMEN) を持っていますが、問題収録数も多くておすすめです。
しかし! いずれも作文の解答例は載っていません(少なくとも私の持っている版は)。1つくらい載せてくれよと思うけど。だから添削を受けるしかない。
私はスペイン語を始めて少しした頃、DELE A2 を受験するにあたってカフェトークの講師に添削を依頼しました。
どのような添削を受けたかは以下の記事でも触れています。すごく良い経験をしたので、添削してくれる講師を探している場合は参考にしてみてください。
DELE A2 受験についてはこちらの記事もどうぞ。
資格関係なく、純粋にスペイン語力の強化として考えた場合
経験上、中級(B1)レベル以降であればスペイン語力向上に作文練習は有効だと思っています。というかレベルが上がるほど、必要なのかもなぁという実感があります。
というのも、自分が一通り話せるようになったあとに停滞期を迎えたとき、作文練習を多く取り入れたことでちょっと違う世界が見えてきたなと感じたからです。
初学者レベルのうちは、書けることがかなり少ないし文法学習を優先した方が良いので、そこまで優先度高くやる必要はないかなと思います。
少なくとも点過去・線過去の活用が問題なくできるようになってからで良い気がする。
ちょっと余談ですが、私は初学者の頃に一度、スペイン語で日記を書いてみよう! と思い立ってそんな本を買ったことがあります(この本→ 日記を書いて身につけるスペイン語)。でも、当時はほとんど書けませんでした。本そのものは、いろんな表現が載っていて良い本です。
当時はまだ線過去・点過去を覚え始めた頃で、現在完了も習っていない状態だったんですが、その本には日記を書く場合の点過去と現在完了の違いなんかが説明されており、それが全然ピンと来ない。笑
よく考えると日記って過去のことを書くものだから、過去の表現が豊富なスペイン語では日記を書くのはそれなりに難しいんですよね。。現在形を使って自己紹介文を書いたり、現在の事象について述べたりすることの方が簡単。
で、当時はなんかもう全然わからなくて書けなくて、つまらなくて日記を書くのはすぐにやめてしまいました。
何が言いたかったかというと、初学者はまずは文法と動詞の活用を覚えるべしということです。
スペイン語作文には、どんな効果がある?
大前提として、作文は手で書くにしろタイピングするにしろアウトプットの一種なので、やったことが記憶に定着しやすいです。
その上で、効果としては次のようなものがあると思います。
- 自分に足りない部分、苦手な部分が明確になる
- 単語、文法(主に動詞の活用、時制の使い方)の正確性が増す
- 言い回しのバリエーションを、自分のペースで習得できる
- 自分の頭が整理される
- 会話でまとまった話ができるようになる
先ほど少し触れましたが、私は B1 〜 B2 レベル(と思われる)頃、非常に伸び悩みを感じる時期がありました。自分ではいろいろやっているつもりでも、全然上達してる気がしないのです。
学習を始めたばかりの頃は覚えれば覚えるほどできることも増え、やればやるほど伸びていって、どんどん話せるようになる、聴けるようになる、楽しい、という感じがありました。
でも、文法を一通り覚えて、だいたい話せるようになると、何をやってもそれ以上伸びる感じがしない。このときはかなり行き詰まり、モチベーションも下がり、学習方法について悩んでいました。何をやったら効果的なんだろう? と。
ネイティブの先生にもそれを伝えて、一度相談したことがありました。
先生からは「停滞は誰もが通る道。ある程度習得して一定のところまでいけば、その後は伸びにくくなる。あなたももう一定ラインまで来ちゃったから、あまり上達を感じられないのは仕方のないこと」という回答。
そんなものなのかぁ… とちょっとは慰めになったものの、もっと上達するためには何をすれば良いかはやっぱりわからなかった。
本来、上達とか効果の有無は目的に照らし合わせて測定されるものですが、当時は明確な目的設定ができなかったんですよね。もともとスペイン語を始めたのはビジネス目的や留学目的などではなく、家族の都合で突然スペイン語圏に住むことになって必要に迫られたから。それで勉強し始めて、日常生活では問題ないところまでいけた。スペイン語は楽しいし、わりと話せるようになった。でももっとネイティブと豊富な話題で会話ができるようになりたい、とにかくもっと話せるようになりたい、という状況。
そんなときに始めたのが作文の練習でした。作文をやった結果、具体的にどのくらい力がついたか、説明するのは難しい。でも確実に言えることは、作文をやり始めてからは「これやってて意味あるのかな?」と疑問を持って立ち止まることなく、自分でぼんやりながらも効果を感じながら、納得して集中してスペイン語に取り組めた、ということです。
なんか、ありませんかね、自分の中で停滞感があったり学習がうまく進まなかったりすると、何かやってても「これ意味あるのかな?」「この方法って効果あるのかな?」「もっといいやり方があるんじゃないかな?」と、学習そのものではなく「方法論」にこだわってしまうこと。どうやれば結果に結びつくかが見えないときに、そういう気持ちは起こりやすいんじゃないかなと思います。
私もそんなふうに悶々とした時期を一時過ごしたりもしましたが、作文を始めたことで新しい種類の光が見えてきた感じがします。
では上に挙げた5つの効果についてもう少し詳しく説明します。
自分に足りない部分、苦手な部分が明確になる
会話はできるんだけど、いざ書こうとすると書けない、ということはままあると思います。単語のつづりがわからない(rとl、sとc、アクセント記号の位置 など)、動詞の活用が書けない、従属文で正しい時制がわからない、など。
会話だと相手との話の流れがあるので、正確に話せなくても意味が通じることが多いと思います。うまく言えないときに相手が文脈から補足してくれて、話が続いていくことも多い。会話だったらそれで良いし、流れに乗っていくのも大事なことの1つです。
でも書けないっていうことはやっぱり、ちゃんとは理解しきれてないっていうことだと思うんですよね。そういう部分が明確になります。あぁ、わかったつもりだったけどわかってなかったな、あれ、この単語書けない、あれ、こういうときは時制はどうなるんだっけ? みたいな気づきが出てきます。
そういう気づきを得られることが、作文学習の良いところの1つです。
自分ができていない部分が明確になったら、そこを中心に会話で積極的に話すようにして練習したり、そのテーマでいろいろ書いてみたり、文法を復習したり、単語を覚え直したり、ということができます。
単語、文法(主に動詞の活用、時制の使い方)の正確性が増す
これは上記と基本的に同じ話ですが、話し言葉ではなんとなく伝わっても書くとなると正しく書く必要があるので、文法を正しく習得しなきゃいけないことになります。
作文でトレーニングしていると、会話でも正しい文法が出てきやすくなります。
言い回しのバリエーションを、自分のペースで習得できる
作文をやればやるほど言い回しがストックされていき、結果、会話でも使えるようになります。
特に作文トレーニングが良いのは、自分のペースで新しいことを覚えられる、練習できるということです。
たとえば、会話の中で自分が使ってみたいフレーズがあった場合、使えるかどうかは会話のテーマや流れによりますよね。会話は相手がいるものだから。でも作文なら、自分の好きなテーマを設定して自分の使いたいフレーズを存分に練習できます。
また、会話レッスンやネイティブとの会話中に向こうから何か新しい単語やフレーズが出てきた場合、すぐに話が流れていっちゃうので新しいことを覚えにくいんですよね。えっ今の言い回しもう一回、とか、レッスン中ならまだ言えますが普通の会話中だと難しくないですか。つづりもパッと出てこなかったり、あとで調べようと思っても忘れてしまったり。全部メモなんか取ってられないし。
会話は瞬発力勝負なところがあるので、何かを習得しようとするにはとにかく時間がない。
作文をやっていると、あれ、これってどう言うんだっけ? どういう言い回しがあるかな? いつもこう言ってるけど、何回も使ってるから他に似たような言い回しないかな? という発想が出てきます。
そういう発想が出てくるといろいろ調べて書こうとするので、時間はかかりますが、そのぶん新しい言い回しもしっかり定着していきます。調べる過程でわかってくることも多いし、良い先生に添削してもらえば使える表現も増えていきます。
自分の頭が整理される・会話でまとまった話ができるようになる
話題が複雑な場合、いきなり話そうとしてうまく話せないことも、一度書いてみてそれから話そうとすればだいぶスムーズにいきます。書くためには自分の考えや言いたいことをまとめる必要があるので、当然ですよね。
中級以降になってだいたい話せるようになってくると、文法だけじゃなくて話す内容の難度がどんどん上がっていくんですよ。●●について賛成? 理由は? とか、日本の●●ってなぜ? とか。語学学校だったら授業のテーマとしてそういうのが設定されてるし、日常会話でも仲の良い人ができてくるとそういう突っ込んだ話をする機会も出てきます。
母語なら思ったことや考えたことをパッと話せても、外国語だと頭の中では(母語で考える or 漠然と考えが浮かぶ)→(外国語で発話)という二段階になる。大変ですよね。
語学学習ではこの2ステップの時差をできるだけゼロに近づけ、外国語で考えることが目指されていることの1つかと思います。でも学習中はやっぱりどうしても時差は生まれるし、頭をめちゃくちゃ使うので大変です。
私はですね、スペイン語圏に住んでいたときネイティブ(スペイン語講師じゃない人たち)からこんな質問を実際にされたことがあります。
- 日本には過労死っていう言葉があるんでしょ? どうして過労死なんて起きるの?
(なんでそんな言葉知ってるんだ...) - 引きこもりって何? どうしてそれが問題なの?
- 日本では親から子どもへのしつけってどんな感じ?
- 日本では教室の掃除は生徒たちがするってホント? どうしてそうなってるの?
- 日本の年金制度ってどうなってるの?
などなど。
これ、日本語でもちゃんと説明できるかどうかあやしいんですけどっていう。笑 こっちのスペイン語力とか関係なく質問されるわけですが、せっかく興味を持って聞いてくれたのにうまく説明できなかった日の夜は落ち込んだものです。
それで、その場ではうまく話せなくても、質問に対するちゃんとした答えを自分なりに考えて、家で作文していました。別にそれを質問してきたネイティブにまた話したわけではないです。作文しながら、そうか、こう答えればよかったのかな、こう伝えるとわかりやすかったかな、っていう自分の気づきにする。
話題の難度が上がってくると、まず話す内容を頭の中で整理する必要があるんですよね。書いてみるとよくわかりますが、作文はそのための良い練習になります。作文で書いたのとまったく同じことを話す機会がすぐにはなくても、ネタとしてはストックされるし、スペイン語でわりと長めのことを話すときの「話の展開」が自分の中でできてくる感じがするんです。
こういうことが特に苦労なくできる人は、この意味での作文練習は不要かもしれません。英語だったり別の外国語がすでにできる人は、思考回路的に慣れてるかもしれないですね。
私はこの時期、ネイティブの先生に「あなたの課題はスペイン語力じゃなくて、考えをまとめる力。考えがあるときはちゃんと話せてるし、ないときは話せてない」と言われていたので、この部分が特に苦手だったかもしれません。
スペイン語学習において、文法の正誤はスペイン語の先生に添削してもらうことで簡単にチェックできるし、やるべきことは「覚える」っていうだけです。が、スペイン語で話をどうまとめるかっていうのは文法の正誤とはまったく別の世界の問題で、自分で作文を書くことで力がついていく気がしています。
こうして書いた作文は添削を受けても良いし、オンラインレッスンで「今日はこのテーマで話したいから、聞いて!」って感じで話すのも良いと思います。
こういうときは講師より自分がひたすら話すレッスンになるので、毎日話せて価格がお得なDMM英会話を使うのがコスパ良しです。もしまだ使ったことがなければ、無料で2回レッスンを体験できるので有効活用してみてください。
いろいろ書いてきて長くなってしまいましたが、中級以降は作文を学習に取り入れると有効、ということについて書きました。
次回は、具体的な作文のやり方をまとめます。