レシピを見ないで作るコツ。有元葉子さんのレシピ本から得たもの
料理研究家、有元葉子さんのレシピ本に『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』があります。
料理本やインターネットのレシピに頼らずに、「作り方の流れや勘どころを頭に入れたら、あとは自分の感覚で作れるようになる」ための本です。
本屋でなんとなく手に取り、なんとなく良さそうかな~と思って買った本でしたが、これがすごく良かった。
- レシピを見ないで料理を作るとはどういうことか
- なぜ、そうすると良いのか
- レシピを見ないで作るためには
こうしたことに触れながら具体的なレシピも織り交ぜ有元さんが語る形式の本で、まるで有元さんの料理教室に行ってお話を聞いているかのように読める本。
このレシピ本を読んで、有元葉子さん流の生姜焼きを始めとしてお気に入りのレシピがいくつもできたし、自分の料理観が変わりました。
今回は、私がこの本を読んで実践してみて感じたレシピを見ないで作るコツ、おいしく料理を作るコツを、本の内容にも触れながら紹介します。
有元さんのおすすめレシピはこちらの記事で紹介中です。
目次
レシピを見ないで作るコツとは? 本を読んで感じたこと
本にはいろんなことが書いてあるんですが、自分で実践してみて感じた「レシピを見ないで作るコツ」は2つ。
- おいしく作るためのコツを知る
- 繰り返し作る
まず、この本を読む前に私がレシピを見ないで作れた料理の数はゼロです。
何を作るにしてもレシピを検索し、レシピを見ながらレシピ通りに作っていました。
そして有元さんの本を買ってから1年半後の今、レシピを見ずに作れるようになった品数は4つです。
- キャベツと豚肉炒め(『レシピを見ないで〜』掲載レシピ)
- 豚の生姜焼き(『レシピを見ないで〜』掲載レシピ)
- きゅうりサンド(みんなのきょうの料理)
- キャベツと薄切り豚のオイル蒸し(みんなのきょうの料理)
4品... 少ないのは否めません。笑
有元さんレシピで作る豚の生姜焼き |
本に掲載されているレシピは他にもたくさんありますが、まだ見ないで作れる状態には至っていないもののほうが多いという感じです。
でも、レシピなしでは1品も作れない状態から、レシピがなくても作れる品ができた、というだけで自分の中ではかなりの進歩です。
上記4つの共通点は何だろう? と考えてみると、レシピを見ないで作れるようになったのには次のようなプロセスがありました。
- 最初、レシピを見ながらレシピ通りに作ってみたら、そこそこおいしくできて気に入った
- 気に入ったのでよく食べたくなり、本に書かれていることに注意して何度か繰り返し作った
- 繰り返し作るうちに、どうやったらおいしく作れるのかがわかるようになってきた(どこまでじっくりお肉を焼けば良いのか等)
- いつの間にか、レシピを見ずに作れるようになった
レシピを見ないで作れるようになるには、やっぱり繰り返し作ることは必要不可欠だと思います。
そして、繰り返し作るうちに「あっ、こうやったらいいんだ!」ということに気づくのですが、そもそもおいしく作るためのコツを知っていないとそれに気づけない。
コツを踏まえて最初からある程度おいしく作れないと、繰り返し作る気にもなれないし、そのコツに独力だけで気づくのは難しいです。結局「レシピなしではやっぱり無理だ」となってしまうと思う。
コツを知り、繰り返し作り、体感する。というプロセスですね。
じゃあおいしく作るためのコツって何なのか。
この本にはいろいろ書いてあって、もちろんレシピごとにコツはあるんですが、どのレシピにも通じるコツ、こうやったら料理下手な私でもできた、というものを以下で紹介します。
有元さんのレシピ本から学んだ、おいしく料理を作るコツ
有元さんの本を読んで、料理センスなしの私がちょっとおいしく作れるようになったかも、と感じるようになった「おいしく料理を作るコツ」をいくつか挙げてみたいと思います。
本の内容を自分なりに解釈して、実践している事柄です。
鉄フライパンを使う
有元さんは、鉄フライパンにこだわって料理をしています。
本を読んで影響を受け、私も鉄フライパンを使い始めました。
すると、料理が下手でも鉄フライパンを使うとそれだけで料理がおいしくなることがわかりました。お肉、野菜ともに鉄フライパンで高温で焼くと、テフロンで焼くのとは味が変わります。
本を読んで最初に買った鉄フライパンがこの島本製作所。おすすめです。
このフライパンで鉄フライパンの良さを知り、その後ラバーゼや中尾アルミ製作所の鉄フライパンも使うようになりました。
お肉をじっくり焼く
鉄フライパンとも関連しますが、お肉をじっくり焼くことがおいしさの面でこんなに重要だなんて... 知りませんでした。
どのように焼けば良いのか、どのように味つけするとおいしくなるのか、くわしいことは本で読んでみてください。
「キャベツと豚肉炒め」が本当においしくできます。
私はもともと野菜炒めの類は嫌いだったんですが、有元さんのこのキャベツと豚肉炒めはコツを押さえて作ってみるとびっくりするほどおいしいです。
キャベツと豚肉に限らず、炒め物全般のコツがつかめます。
鍋やフライパンの中を観察しながら料理する
一般的なレシピ本の中には「中火で10分煮る」などとしか書かれていないものもあります。でもそれじゃだめなんですよね。。
有元さんは本の中で、鍋の中はどんな熱さなのか、火を通すと材料がどんなふうに変化していくのかをよく見て感じるように言っています。
「鍋やフライパンの中をよく観察しながら作る」
この料理の態度があると、鍋やフライパンの中の素材が今どんな状態かがわかるようになります。そして、素材がどうなっているとおいしいのか、じゃあそのためにどうすれば良いのか、が少しずつわかるようになる。
上の章で書いた「お肉をじっくり焼く」というコツも、鍋やフライパンの中をよく観察しながら作ることで得られたものだと思います。
レシピごとのポイントは本で解説してくれているので、まずは本に忠実に、鍋の中をよく観察し鍋の中と相談しながら作ってみると良いと思います。
塩の使い方を知る
塩って重要なんですね。
本の中で衝撃を受けた有元さんの一言はこれでした。
お湯の中に入れた小松菜が、サッと鮮やかな色になったとき。畑で育った葉っぱが、食べ物に変わった瞬間です。
その瞬間を見定めて、お湯から引き上げ、網にのせて冷ます。ほどよく水気を絞ったら、さあ、今日はどうやって食べようか。塩をぱらりでもいいし、しょうゆをたらりでもいいし。
『ごはんのきほん レシピを見ないで作れるようになりましょう。』(SBクリエイティブ 3ページ)
えっ、小松菜って、塩をぱらりとするだけでいいの...? 何それ?
私は青菜に塩だけなんて思いもよらず、おひたしにしなきゃいけないとか、ごま和えにしなきゃいけないなどと思い込んでいたので結構びっくりしました。
でも実際に塩だけ振って食べてみると、小松菜の味がして、おいしい。
えっ、これで良いんだ、本当だ、みたいな。
青菜に限らず味つけの基本は塩なんだなと改めて学びました。
いや、これ当たり前のことかもしれないんですが、一般的なレシピでよくある「塩で味を調整する」の意味が全然わかってなかったなと気づきました。
私は平日の夕食には野菜のだしを使ったスープを作りますが、スープの味つけも基本的には塩だけにしています。たまに胡椒。鶏がらスープの素やコンソメキューブなどはほとんど使いません。塩だけで、おいしくて味わいのあるスープができます。
お肉を焼いて塩で食べるのもおいしいです。(本に掲載されています)
それからたとえば、もやしのナムルの作り方をネットで検索すると、どのレシピもだいたい鶏がらスープの素を加えていますが、実際には塩とごま油だけでじゅうぶんおいしい。
こういう塩の力に気づいたのも、本から学んだ大きなことでした。
味つけ前に、素材の味見をする
調味料を入れたあとに味見をして調整する、というのは一般的なことだと思いますし、私もそういう味見はしていました。
それに加えて、味つけ前の味見をするようになりました。
たとえば、茹でた直後のブロッコリーの味、茹でた直後の青菜の味、塩を加える前のスープの味など、味見をできるものはできるだけ。
その野菜じたいがどんな味なのか、塩ゆでによってどの程度塩分がついているのかを知るために、ちょっと食べてみる。
食べてみてから、どんな味つけにしようかと私は考えます。
『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』(SBクリエイティブ 5〜6ページ)
自分で味つけができるようになるためには、まず素材の味を知ることが大事なんですね。
私は自分の味覚、調味料の分量感覚が信用できないので、できればレシピ通りの分量で味つけは済ませたいなと思う人間です。
でもこうして素材の味見をしていると、自分でもどの程度味をつければ良いのかがなんとなくわかってきます。
センスがなくても、味見を繰り返すうちにちょっとずつ味がわかってくるもんなんだなと思いました。
有元葉子さんのレシピ本『レシピを見ないで作れるようになりましょう』シリーズの内容
有元さんの『レシピを見ないで作れるようになりましょう』はシリーズもので、全部で3冊あります。
それぞれテーマと内容が異なるので、簡単に紹介します。
レシピを見ないで作れるようになりましょう。
シリーズのメイン本は『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』です。
有元さんの考え方や料理に向かう姿勢がわかるのと、レシピが幅広く紹介されています。
取り扱われているテーマは次の通りです。
- 野菜を炒める
- 野菜を煮る
- 野菜を揚げる
- サラダ・あえもの
- 肉を焼く
- 魚を焼く
- 魚を煮る
- 魚・肉を揚げる
掲載されているレシピのうち、私のお気に入りレシピは以下です。特に、キャベツと豚肉炒めと豚の生姜焼きはかなり気に入っています。
- キャベツと豚肉炒め
- 豚の生姜焼き
- かぼちゃの煮物
- 里いもの煮物
- なすの素揚げ、野菜の揚げびたし
- 鶏のローズマリー焼き
- あじフライ
- 鮭の焼きびたし
- 肉団子
有元さんの考え方がわかり、たくさんのレシピを実践できます。料理観を変えてくれた一冊でした。
- 料理への向き合い方
- 野菜や肉をおいしく調理するために必要な基本事項(下処理方法など)
- 有元さんの幅広いレシピ
ごはんのきほん
『ごはんのきほん』では、日々のごはんをおいしく食べるための基本が丁寧に解説されています。
取り扱われているテーマは次の通りです。
- 白いご飯、味つきご飯
- だし、みそ汁、うどん
- 旬の野菜をサッと食べる
- 野菜を食べるパスタ
一般的なレシピ本はだいたい主菜となるおかずにフォーカスされていますが、この本は主菜以外にもフォーカスを当てた貴重な本だと思います。
この本で私が勉強になったことは以下です。特に煮干しだしで作る味噌汁がおいしくて、私にはぴったりハマりました。
- 白いご飯をおいしく食べる方法
- 煮干しだしの良さ
- 青菜の処理方法、茹で方、味つけ
- パスタソースのレシピ
白いご飯をおいしく炊く方法、食べる方法については、こちらの記事にもまとめました。
ふだんの洋食
『ふだんの洋食』は、家で作る洋食をテーマにした本です。
洋食のレシピに加えて、鉄フライパンの使い方が詳細に解説されていて非常に勉強になります。鉄フライパンを使ってみたい方、使っているけどうまくいかない方には特におすすめです。
取り扱われているテーマは次の通りです。
- フライパン焼き、鉄フライパンの使い方
- スープとシチュー、スープストックのとり方
- みんなが喜ぶ洋食(ハンバーグ・グラタンなど)
- オーブンとの付き合い方
- お米の洋風料理(リゾット・パエリア)
- サンドイッチ
- 量らずに作るおやつ
目玉焼きの焼き方をこんなに丁寧に解説してくれるレシピ本はないんじゃないかと思います。
そして、オーブンで焼くハンバーグは最高です!
- 目玉焼きの焼き方、切り身魚の焼き方
- 鉄フライパンの使い方、うまく使うコツ
- スープストックのとり方
- オーブンで焼くハンバーグの作り方
- グラタンの作り方
オーブンで焼くハンバーグには、ラバーゼの鉄フライパンがおすすめです。
3冊のうちどれが良いかで迷ったら、まずはやっぱりメイン本である『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』が良いと思います。
この本を読んで有元さんのやり方が自分に合っているな、もっとレシピを知りたいなと感じたら、2冊目、3冊目も買って損はないはずです。
有元葉子さんのレシピ本を読んで、変わったこと
この本を読んで自分の中で一番変わったのは、おいしく作るコツがわかるようになったというのもあるんですが、やっぱり料理が楽しくなったというところが大きいかなと思います。
本の帯に「毎日の料理が楽しくなりました」という読者の声が載ってるんですが、これがほんとにほんとなんですよ。
買った当初は、どういうことかはわかりませんでした。
料理なんて嫌いで苦手で義務でやってただけでした。
でも、本を読んで有元さんの考えを知り、少しずつレシピを試しているうちに、あぁ私料理が嫌いじゃなくなってるかも、料理するの楽しいかも、みたいに感じていることに気づいたんですよね。
有元さんレシピで作るオーブン焼きハンバーグ |
本の序文には、次のように書かれています。
レシピを見ないで作ることを続けていると、料理の勘が冴えてきます。本当の基本が身につきます。「次はこうしてみよう」と応用力がついてきます。自然にレパートリーが広がっていきます。だから献立に悩むこともなくなります。
そしてなにより、料理が楽しくなってきます。
『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』(SBクリエイティブ 6ページ)
私はまだ料理の勘が冴えてきたり、自然にレパートリーが広がったり、というところまでは至ってないんですが、料理が楽しくなってくるというのは事実でした。
そもそもですね、レシピを見ないと料理を作れないってだめなこと? と私は思っていました。
毎回レシピを見ながらおいしい料理ができるなら、それで良いはずですよね。別にテストされるわけでもないし。
でも今は、レシピを見ないでもっといろいろ作れるようになりたいなと思っています。
それは、レシピを見ないで作る料理は結構楽しいということに気づいたからだと思います。
有元さんが言うように「鍋の中に向き合う」ことで自分でもおいしく作るコツがわかり、おいしくできるからもっと作りたくなる、という良い循環ができています。
まさに料理が作業ではなくなってくる感覚があり、それが楽しさにつながっているのかなと思います。
私は本の内容を実践し始めてからしばらく経ちますが、有元さんが言う通り料理は一生続けていくライフワークなので、この本で料理の楽しさに気づくことができたのは幸運だったなと思います。