特別展「古代メキシコ」に行ってきた!赤の女王のマスクを初めて見た感想
東京国立博物館(東京都上野)で開催されている特別展「古代メキシコ──マヤ、アステカ、テオティワカン」を見に行ってきました。
現在のメキシコを中心に発展したメソアメリカ文明のうち、マヤ・アステカ・テオティワカンという3つの文明に焦点が当てられています。
展示の目玉は、赤の女王のマスク。メキシコ国内とアメリカ以外では初公開とのこと。
赤の女王は、辰砂という真っ赤な粉で覆われた石棺から発見されたためにその名で呼ばれており、マヤ文明の王朝の1つパレンケの黄金時代を築いたパカル王の王妃だと考えられています。
赤の女王やパカル王については、パレンケ遺跡訪問記で詳しく書いているのでよかったら。
赤の女王の美術品は私のメキシコ滞在中にはメキシコでも公開されておらず、今回初めて見ることができました。やはり写真で見るのとは全く違い、非常に興味深かったです。
目次
赤の女王は想像していたより小柄で細身
写真では感じにくいのですが、赤の女王は想像していたよりも小柄で、これがまず大きな驚きでした。
マスクのサイズも小さく、お顔も小さかったのかなと想像します。推定身長は154cmとのこと。
赤の女王の石棺が見つかったのはパレンケ遺跡の赤の女王の神殿と呼ばれる神殿内部の墓室なのですが、見に行ったとき、石棺がやけに細そうだなとは感じていました。
これ
石棺のある墓室は金網で仕切られているので間近では見られないのですが、人を入れるにしては十分な幅がないように見えた。
かなり窮屈な状態で石棺に入れられたのかな、と少し不思議に思っていたのですが、今回の展示を見て少し納得。あのくらい小柄であれば、石棺は十分なサイズなんだろうなという気がしました。
模型の身体の幅も細身で(実際にどの程度スリムだったかは不明ですが)、そっか~こんな感じだったのか~と。実際に見るとやっぱり違いますね。
展示の演出もとても洗練されていて素敵。マヤの神秘的な雰囲気が出ていました。
ここで改めて思い出したのは、埋葬時の辰砂に関する疑問です。
今回の展示では身体の模型が赤く塗られていて、その上に仮面などの装飾が展示されていました。
でも本当にこんな感じだったのかなぁ、というのが、最初に赤の女王の遺骨の写真を見たときから今でも感じている疑問なんです。
パレンケ遺跡訪問記の記事にも書いた通り、赤の女王の石棺発見時は、遺骨に辰砂の粉が直接降りかかっている状態でした。
参考レイナ・ロハとパカル王の墓〜パレンケ遺跡訪問記(2)赤の女王の神殿、碑文の神殿、頭蓋骨の神殿
埋葬時に肉体に粉がかけられ、年月が経って肉体が消えたときに、こんなにきれいに満遍なく、遺骨に粉がかかっている状態になるものなんでしょうか。
写真では、まるで遺骨に直接粉がかけられたかのように真っ赤になっていて、すごく不思議な感じがしています。肉体に粉がかけられていたとしたら、発見時にもう少し赤い粉がまだらになっていてもおかしくないような気がしてしまうんですよね。骨にあんなにきれいに粉がかかるのは自然なことなんでしょうか。
ただ、そのあたりに関する解説は特になかったので、研究者の方たちの間では特に不自然なことではないのかもしれません。
赤の女王のマスク以外の副葬品
赤の女王というと仮面にばかり注目しがちですが、今回しっかりマスク以外の小物も見ることができました。
以下の副葬品が展示されています。
- マスク
- 冠
- 頭飾り
- 首飾り
- 腕飾り
- 胸飾り
- ベルト飾り
- 足首飾り
- 貝・小像
- 針
- 小マスク
特に興味深かったのが、貝殻の中に置かれていた小像です。赤の女王の生前の姿を表現しているとみられるそう。当時のマヤの世界観がよく反映されていることがわかります。
展示では小像の細かな細工はよく見えなかったのですが(細工が擦り切れちゃっているように見えた)、公式図録に収録されている写真では彫刻の様子がよくわかりました。
奇妙でかわいいメソアメリカ文明の美術品
メソアメリカ文明の美術品の魅力は、奇妙さとかわいさが同居している点だと私は思っています。しかもそれが特殊な世界観に根付いていて、時代・文明によっては非常に高度な技術で制作されているところもすごい。
この特別展の一発目を飾ったのは、こちらの変な顔をしたちっこい石偶。
写真だとわかりにくいのですが、約5×8cm ですっごく小さいの。めっちゃかわいいの。
言葉を選んでなくてすいませんが(本当は神聖な像のはずなので、かわいいとか言って盛り上がるべきものじゃないとは思うんですが。。)この顔はオルメカ文明の美術品に特徴的な顔でジャガーに似せてあるのです。中央に寄った瞳、低い鼻、への字型の口が特徴です。
オルメカ文明:紀元前1200年頃~前400年頃、メキシコ湾岸を中心に栄えた。メソアメリカで最初に興った文明とされている。
オルメカ文明ではジャガーは神聖視されており、特に支配者の顔は神聖化のためにジャガーに似せてつくられたようです。
公式図録では、この像は幼児の像との解説がついています。幼児は、オルメカ文明の美術品では生贄の象徴として描かれることが多いです。
参考
今回の展示では、オルメカはスポットを当てられていないのであまり出品はありませんでしたが、他にもオルメカ文明の美術品はいろいろあります。オルメカ文明の記事
この特別展が、メソアメリカ文明の起源であるオルメカの美術品でスタートしている点はすごく良いですね。
奇妙でかわいい作品は他にも挙げるとキリがないのですが、少しだけ紹介。
鷲の戦士像(アステカ文明) 戦闘と宗教において重要であったアステカの勇敢な軍人と考えられているようなのですが、鳥の着ぐるみを着ているようで、、、かわいい |
エエカトル神像(アステカ文明) 神様を体操座りで表現するセンスよ |
とはいえ、マヤの美術品は一味違っています。
下の作品は精巧な浮彫の石板。素晴らしい。球戯(Juego de pelota)がモチーフとされています。
トニナ石彫171(マヤ文明) |
マヤの美術品は、描かれている人間の顔が非常に特徴的なのですぐにわかります。基本的に横顔で、平たく長い額を持っている。
パカル王とみられる男性頭像(マヤ文明) |
マヤの人々の顔の特徴は、こちらの記事にくわしく書いています。
こちらはテオティワカンの出土品なのですが、マヤ人が描かれていて美術様式もマヤのもの。
トランペット(テオティワカン文明) |
おそらく、マヤ地域で制作されたものがテオティワカンにもたらされたと思われ、1,000km近く離れた場所で栄えた両者の交流が示唆されます。現グアテマラで栄えたティカル遺跡にも、テオティワカンと交流があったと思われる石碑が残されています。
この特別展では約140点の美術品が展示されており、上記はごく一部です。興味があればぜひ見に行ってみてください。
ほんと、メソアメリカの美術品は魅力的です。
「古代メキシコ」公式図録が非常に良い
今回の特別展にあわせて作られた公式図録「古代メキシコ Ancient Mexico」が非常に良いです。全展示作品の写真が解説つきで掲載されています。
今回展示されていた美術品は、私は実はメキシコの博物館で見ていたものも多いのですが、メキシコの博物館は基本的に展示品の解説はついていないので、それがどういう作品なのかがよくわかっていないものも多くありました。
また、向こうで勉強したこともすべてスペイン語だったので、日本語で理解する機会はありませんでした。
日本語でこうしたメソアメリカ文明の美術品の解説を読める機会はそうないはずなので、おすすめです。
博物館のショップかオンラインで購入できます。
キッチンカーのタコスもおいしかったよ
東京国立博物館の平成館前にはキッチンカーが何台か出ていました。
そのうちの1つで食べたタコス、おいしかったです。値段はメキシコの数倍したけど(笑)、味は本物だったので満足。
タコス2つで1000円。ひえー。メキシコシティの屋台だと1つ70~90円くらいで食べられます。
タコスの皮は tortilla(トルティージャ)と言って、一般的にはクリーム色っぽいものが多いですが、このように黒いものもあります。
黒いものは tortilla negra(黒いトルティージャ)や tortilla azul(青いトルティージャ)、tortilla morada(紫色のトルティージャ)と呼ばれ、紫トウモロコシから作られます。普通のクリーム色のトルティージャは、普通の白いトウモロコシの粉から作られます。
黒いトルティージャも白いトルティージャも、味の違いは私には正直わかりません。どっちもおいしい。特に、メキシコの田舎とかの屋台で売られている作り立てのトルティージャは本当においしいです。